東京都心の地価高騰で、都心のAクラスビルのなかにはキャップレートが2%台まで下がり、市場が過熱という感じですね。一方、地方都市では首都圏に比べ、利回りが高く、物件取得競争も緩やかで買いやすいので不動産投資のターゲットになってきています。4月6日付の日本経済新聞によると昨年末時点で秋田、島根など14の県を除きリートの投資が全国に拡大しています。とはいえ地方都市での不動産投資は、利回りが高いというメリットの反面、リスクもその分は高いというトレードオフ関係があることを忘れてはいけません。

大都市に比べて地方の不動産投資リスクは、家賃下落、空室率の増加、不動産価格の下落など期待収益の下振れ幅が大きいことです。その理由は、一言でいうと市場規模が小さいからです。

例えば東京の賃貸マンションで1年目の純収益に対する利回りが4%とし、地方都市のA市の同等マンションが利回り6%として、どちらも5年運用して売却するとします。東京のマンションが家賃が横ばいで、運用後の売却価額が10%上がったとすると、内部収益率(IRR)は5.8%となります。一方、A市のマンションは家賃を10%値下げし、売却価額も10%下落したら、IRRは3.7%となります。

購入したときは、2%も利回りが高かった地方都市A市のマンションは、家賃や売却価額の下振れリスクで下落したため、運用期間トータルの平均投資利回りでは東京に比べ2.1%も投資成績が下回ります。

このように地方都市では、購入時の利回りの魅力だけで投資してしまうと、家賃や不動産価格の下落リスクを見逃して失敗する可能性が高いのです。

国内で少子高齢化、人口減少が進んでいますが、東京など大都市圏に比べて地方ほど人口減少の幅は大きく、さらに世界経済のグローバル化で工場が海外に移転し、規制改革による中小企業の淘汰のトレンドと相俟って地方経済の空洞化が進み都市成長力が縮小しています。

近年になって都市間競争が激しく、成長する地域には人が集まり、高齢化社会に強い医療、福祉・介護をはじめ教育、情報通信などのサービス産業が成長し、雇用も増え、都市魅力が増して、さらに人口が流入しています。一方で成長できない地域は、ますます人口が出て行き、財政も悪化して、構造改革以後、公共投資が地域経済を支えるという構図も消滅したので人口減少と地域衰退の負の連鎖になっています。

今年の地価公示価格は、人口が減少している地域と地価下落に高い相関性があることを証明しています。都市間の人口移動で地域の産業構造や雇用、賃金などの経済格差が拡大し、その格差が地価に反映されているのです。

不動産投資でいうと、例えばアパートや賃貸マンションのような住居系は、単身者や新婚夫婦の人口が多いほど需要は膨らみます。借りる人の所得は家賃水準に影響するので、生産年齢人口や雇用機会、勤労者所得が減少していく地域では成り立ちません。

またオフィス賃貸であれば、オフィスワーカーの人口規模や金融機関、取引先、情報関連、行政機関など一定規模以上の集積がビジネス効率上必要なので、人口動態・人材の多様性、都市の成長率の影響を受けます。物販や飲食などの店舗賃貸も同様に、商圏人口や個人消費、つまりは住んでいる人の懐具合などにテナント需要や賃料が左右されます。

一口に地方都市と言っても、上位から下位までの階層構造があります。つまり「中枢都市(政令都市など)」>「中核都市(県都など)」>「地方中小都市」に分化され、規模や機能がピラミッド構造になっているので、十把一絡げ、ステレオタイプの議論は、不動産投資では危険です。

次回は、地方都市を分けて不動産投資の適性度を考察します。

山田毅(やまだ つよし)氏 プロフィール
不動産鑑定士、司法書士、株式会社日本システム評価研究所代表取締役。1978年、不動産鑑定士・司法書士事務所開設を経て、96年、福岡市に株式会社日本システム評価研究所を設立。不動産鑑定評価、不動産投資コンサルタント、DCF法のソフトウエア開発を行う。地価動向や不動産投資、不動産ファンド関連に精通し、新聞・雑誌の取材を数多く受ける。全国賃貸住宅新聞社主催不動産投資セミナー講師、国交省登録機関での宅建主任者実務講習講師をはじめ、雑誌『建築ジャーナル』、『RMJ』への寄稿など幅広く活躍中。

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